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横浜地方裁判所 昭和48年(ワ)630号 判決

原告

東海地産株式会社

右代表者

河添計見

右訴訟代理人

鈴木繁次

被告

株式会社 信栄

右代表者

山田実こと

雀学洙

右訴訟代理人

石川勲蔵

主文

別紙第一物件目録記載の土地を競売に付しその売得金を三分しその一を原告にその余を被告に分配する。

原告の土地引渡請求を棄却する。

訴訟費用はこれを二分しそれぞれを各自の負担とする。

事実《省略》

理由

一請求原因1、2の事実は当事者間に争いがない(なお、原告の昭和四八年二月五日付分割協議の申出に対して被告がこれに応じなかつた以上、原告がその当時他の共有者である鈴木に対して分割協議の交渉をしたか否かを問わず、本件土地につき共有者の分割の協議が調わなかつたものと言つてよい)。

二そこで本件土地を現物分割することの可否について検討する。

1 本件土地は二筆の土地であるが、両土地は隣接して一団をなしているものであるから、現物分割の可否を検討するにあたつてはこれを一体として考えるべきである。

2 本件土地を現物分割するについては、分割後の両当事者の取得地を別紙分割図(一)あるいは同(二)記載の位置形状にする分割方法(以下、前者を「(一)の分割方法」、後者を「(二)の分割方法」という。)が考えられる。ところで鑑定の結果によれば、昭和五五年九月一日当時において分割前の本件土地の更地価額総額は金一億七一〇六万七〇〇〇円であるが、分割後の原告取得地と被告取得地の価額が共有持分割合に応じて一対二となることを前提とした場合、(一)の分割方法による分割後の本件土地の更地価額総額は金一億一一九一万一〇〇〇円、(二)の分割方法による分割後の本件土地の更地価額総額は金一億三九一九万三〇〇〇円であることが認められる。

3 また、〈証拠〉によれば、本件土地上にはほぼ同土地いつぱいに原、被告共有の木造亜鉛メッキ鋼板葺二階建事務所(床面積一階224.79平方メートル、二階218.18平方メートル)が建つており、これを原、被告のほか数人の賃借人が占有していること、右建物は昭和二五年頃建築され、当初は木造亜鉛葺平家建事務所(床面積四六坪)であつたが、昭和三五年頃現在のものに改築されたのであり、朽廃するまでにはなお相当期間を要することが認められる。従つて、本件土地を分割した場合、右共有建物が分割された双方の土地に跨つて存在することになり、土地の権利者と地上建物の権利者が一致しないため、分割土地の利用ないし処分がより制限される結果となることが予想される。

4 右2、3の事実によれば、少くとも、本件土地はこれを現物分割することにより著しく価格を損ずるおそれがあるから、現物分割をすることはできないものと言うべきである。

三以上の次第であるから、本件土地はこれを競売に付し、その売得金を原告及び被告に対し各持分に応じて分配することとし、原告の本件引渡請求は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九二条を適用して、主文のとおり判決する。

(佐藤安弘 小田原満知子 太田和夫)

第一物件目録、第二物件目録〈省略〉

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